町のこと

町の電気屋の店主に誘われ、店主が経営するバーの手伝いをした。

時給も払うというので、特に断る理由もないので社長に相談して、朝から店主の待つバーに行った。

 

実は前日、僕が会社のソファで社長と話し合いをしているときに、店主が来てそこでちょっと手伝ってほしいということで、店の掃除をした。

 

店主が「どうせ暇だし、掃除はあとでいいし、ちょっと話そう」ということで、カウンターごしに二人で話し合った。

 

町民のこと、7年前にこの町に来て企業したこと、12月からバーを始めたこと、社長のこと、など色々と聞いた。

その気があるならこの店をあげると誘われたりもした。

昼になると、隣のおばさんから「カレーを作るから食べにおいで」と誘われ、そこでホタテカレー、サラダ、山芋の酢漬け、ホタテの味噌汁を食べた。

ひとつひとつ量が多いので食べきるのに苦労した。

 

友人は食べきれないときは断って残すと、話していたが、僕はせっかく出してくれているので残さず食べるのが礼儀だと思う。

 

昼食後、バーに戻って掃除を終わらせ、また話し合いが続いた。

3時半頃、店主の友人が漁業を終えてバーに遊びに来た。

 

漁師を辞めた話、雇われ漁師になった話、漁業組合のこと、など話を聞いた。

漁業の現状を変えたくて組合長に掛け合ったこともあるらしく、どうにかこの地域を活性化させたいとのことだった。

だけど、変わろうとしないと嘆いていた。

バーの店主も商工会の話をしていた。

 

5時過ぎになって社長から電話がきて、会社にもどってきてほしいとのことで、バイト代のお礼を言って店をあとにした。

 

会社につくと、社長が友人の件で愚痴を言ってくるので、「ふんふん」と頷いて話を聞いた。

 

風邪をぶり返したのか、昼の気疲れか、ボーっとしてきたので、社長が別のお客さんの相手をしているときに、一言断ってそそくさと会社を出た。

 

帰宅して、外出中の友人に夕飯の買い出しを頼んで、熱を測るとまた上がっていたので、いったん布団で横になった。

 

しばらくして、友人が帰ってきて、その日はおにぎりと焼きそばとポテトサラダ、肉じゃがを食べた。

 

以前、この町に来ると言っていたKくんに連絡すると、「会社から退社しないでくれ、とお願いされ、断り切れず退社するのが半年伸びた」と聞いた。

給料は年収にして50万プラスになったらしいが、まだ悩んでいる様子だった。

 分からなくもない、都会で仕事を続けていれば、いまの状況は変わらないけど、いまの暮らしはある意味で保障されているし、その会社でも必要とされる。

年収がそこそこあれば、結婚や家庭だって持てるだろう。

 

 

田舎に来るとどうだろう?

人手が足りないので何らかの仕事はあるが、一般的な年収が得られることはないだろう。

ここですぐにできる仕事といえば、繁忙期のバイトや、ちょっとした手伝い事だ。

自分も何度か誘われている。

 

ここでは稼げる職業がきわめて限られているのだ。

稼ごうと思うと法人化した農業や漁業のサラリーマンや、公務員、農協職員などになるのがいい。

それらの仕事は都会ほど拘束時間は長くないだろう。

 

仮に年収が少なくとも、食料は隣近所から貰えるし、食いっぱぐれるようなことは絶対ないと思う。

それに、なにかあればどこからか噂を聞いて、町民たちが助けてくれる、そんな風土があるのだ。

冬の暖房の燃料代などは1~2万円だと聞くけど、食費が掛からないので、そんなに心配はないだろう。

 

ここはまったりと暮らしたい人には打ってつけだと思う。

ただ、町が衰退しているのは明らかなので、将来的、永続的な収入を考えると、ここに滞在してみて、自分たちで何かしら興していく必要があると思う。

 

お世話になっている社長には話していないが、もし僕がここでずっと暮らそうと決めたら、やりたいなと思っていることをいつか話そうと思う。